国税は、所得税上の事業所得/雑所得の区分について収入金額300万円を基準金額として判別する旨の通達制定を目論んでいるようです。
これまで、収入金額300万円には至らない規模であっても、実質的に事業といえるのであれば、事業所得として申告し特別控除や損益通算などの特典を享受できていました。
しかし、今回の通達が制定されれば、収入金額300万円以下であれば基本的には雑所得と整理されてしまうことになってしまいます。
そうなれば、事業所得のときに利用できていた特別控除や損益通算が利用できなくなる他、経費の損金算入範囲も大幅に縮小されてしまいます。
今回の通達案は実質的な増税案ということです。
【別紙】新旧対照表 より抜粋
改正前 改正後 (事業から生じたと認められない所得で雑所得に該当するもの)
35-2 次に掲げるような所得は、事業から生じたと認められるものを除き、雑所得に該当する。
⑴~⑹ 同 左
⑺ 不動産の継続的売買による所得
⑻ 同 左(業務に係る雑所得の例示)
35-2 次に掲げるような所得は、事業所得又は山林所得と認められるものを除き、業務に係る雑所得に該当する。
⑴~⑹ 省 略
⑺ 営利を目的として継続的に行う資産の譲渡から生ずる所得
⑻ 省 略
(注)事業所得と業務に係る雑所得の判定は、その所得を得るための活動が、社会通念上事業と称するに至る程度で行っているかどうかで判定するのであるが、その所得がその者の主たる所得でなく、かつ、その所得に係る収入金額が300万円を超えない場合には、特に反証のない限り、業務に係る雑所得と取り扱って差し支えない。
この通達案ですが、読めば読むほどおかしい通達案だと個人的には思います。
文言がそもそも不明瞭すぎて意味がわからない箇所があります。
さらに、実際に実務に適用した場合に、不平等/不当な結果になるように思うのです。
ざっと挙げると以下のような感じです。
- 将来、収入(300万円超規模)の獲得を見込んでいるものの、研究開発投資が先行しており、収入は300万円を超えていない場合
→「特に反証」がある場合として、事業所得として申告するのが正しい? - 「所得に係る収入金額が300万円を超え」ず、かつ「特に反証のない」場合
→「差し支えない」ということは、すべて雑所得として取り扱わなければならないわけではなく、事業所得として取り扱う余地があるということ? - 過年度から継続的に同一の事業を営んでいる場合で、過年度においては、「所得に係る収入金額が300万円を超え」る収入があり、事業所得として取り扱っていたが、市況の悪化等により向こう数年ほどは継続して収入金額300万円以下となる見込みとなった場合
→その収入金額の低下が一時的と見込まれる場合には、事業所得として取り扱うのが正しい? - 例えば小売業とコンサルティング業とでは利益率がまるで違うのに同一の収入金額300万円を基準にするのは不当なのでは?
- 複数の事業を行っていて、それぞれは収入金額300万円以下だけど、合計すると収入金額300万円を超える場合
→事業所得として申告するのが正しい?
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2022/8/31が期限となっています。
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